■うわごと
先日、帚木蓬生氏の「守教」を読んだ。筑後地方の隠れキリシタンの物語である。時を同じくして「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」が世界文化遺産に登録が適当と、イコモス(国際記念遺跡会議)がユネスコに勧告した。
物語では、百姓たちは苦しい日々を生き抜くためにキリシタンになった。何かが変わるかもしれないというかすかな希望で必死に祈った。密告の恐怖、残忍な処刑、転ぶか、裏切るか、それとも死か。
信者たちは教えを棄てたと偽り、信念を曲げず隠れ続けた。いろいろな迫害の中、祈り続けた信仰のなかには『愛』がつらぬかれた。
迫害はあらゆるところにある。人種差別による迫害、宗教による迫害、貧富の差による迫害。
黒人差別の迫害と闘い「I Have Dream(私には夢がある)」の演説をし、テネシー州、メンフィスで凶弾に斃れた、マーティン・ルーサー・キング・ジュニアも「愛」について語り続けている。彼は次の言葉を残している。
「最大の悲劇は、悪人の圧政や残忍さではなく、善人の沈黙である」と。
この「守教」は今村信徒と呼ばれる隠れキリシタンが発見されて150年目に発刊された。今でも大刀洗町には国の重要文化財となっている大正2年に建造された美しいレンガ造りの「今村天主堂」がある。