コーヒーブレイク

■コーヒーブレイク

　カラフルな象

　その日は友人達との久しぶりの食事会だった。最近は近所に住む娘と孫がよく遊びに来ていて、この日も夫と娘に夕飯の支度をし、出掛けようとした時だった。

留守番の娘に声を掛けて出ようとして、玄関でいつものように家の鍵をバッグから取り出そうとして気づく、あれっ鍵が無い。

　その日の午前中は小学校の卒業式に来賓として招かれていたのを思い出した。

「そうだ、違うバックで出掛けたから、その中だ」履きかけた靴を脱ぎ部屋に戻って、朝持って行った黒いバッグの中を見るが無い、外のポケットなども確認したがどこにも無い。

　『鍵が無い！』

　私は本当に青ざめた。正確には鍵は１本ではなかった。自営業のため、警備会社の解除キーから実家の鍵まで何本もの鍵がついている。

　「外で落としたのかな？」

　でも、バックを開ける場面はそうはなかったはず。私は約束していた友人に遅れると連絡して娘と一緒に鍵を探した。しばらく家の中を探したが見つからず、私は諦めて食事会へ出掛けた。

　友人達との食事は楽しかったが時折、「見つからないとどのくらいの損害？」が頭をよぎる。

　帰ると夫が「あの後、娘と探したけど見つからず、派出所へも聞いてみたぞ」と言う。

　そして深夜、渋る夫と一緒に道に落ちていないか懐中電灯を手に小学校まで探しに行ったがどこにも無い。

　諦めて家に戻ると夫があの黒いバッグの中を見ている。

　「そこは一番に見たけどなかったよ」と声を掛けたが、諦めきれない夫がそのバッグを振った瞬間、カチャと音がした。

　「えっ」

　よく見るとバックの内側にポケットがあり、鍵はその中に入っていた。

　結局、鍵は最初からここだったのだ。

　嬉しそうな夫が私の鍵をしげしげと見ながら「探す時、どんなキーホルダーを付けていたかを娘に聞いたら、カラフルな色の象だよって言ってたけどこれが象？」「ううん、違うよ。キーウィ（鳥）だよ。ニュージーランドのお土産で頂いたんだよ。」

　毎日見ているはずなのに、何と妻の持ち物に無関心なことか、いや無関心は持ち物だけじゃないよね。

　ま、これが夫婦円満の秘訣かな。

（Ｔ）

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★平成30年（2018年）５月１日　今宿タイムズ第428号