コーヒーブレイク

■コーヒーブレイク

匂い

　友人が教えてくれた「きゅうりの佃煮」のレシピで一年ぶりに佃煮を作った。

　畑にできた山のようなキュウリ。

　しかも雨で収穫できない間に「おばけきゅうり」になってしました。

　こんなに大きくなってしまうと中には大きな種はあるし、実は柔らかいしで使い物にならない。

　そんなきゅうりにぴったしのレシピを友人が数年前に教えてくれた。

　作ってみると意外といける・

　おまけに日持ちもする。

　温かいご飯にぴったしで食も進む。

　で、ここ数年、きゅうりが沢山できるこの時期には必ずこれを作るようになった。

　沢山作ると知り合いにお裾分けするのが楽しみのひとつでもある。

　普段料理は作るばかりで、人の作った料理を食べることは少ないのだが、最近、子ども食堂でごちそうになる機会があった。

　食事を待つ間キッチンから良い匂いが漂ってくる。

　自分で作ると料理に集中するせいかあまり匂いに気が付かないが、料理を待つ間は期待もあってか匂いに敏感になっているようだ。

　「この匂いはごま油で炒め物？ニンニクの匂いもする」

　作り手にとってはわからないけれど、食べ手にとっては食欲をそそる心地よい匂い。匂いってこんなに大事なものだったのだと気付く。

　昔はどの家庭でも大勢で食卓を囲んだものだ。

　七輪で焼いた魚の匂い、糠漬けを混ぜるおばあちゃんの手の匂い。

　食欲が落ちるとおばあちゃんがニンニクを皮ごと真っ黒に焼いてホクホクの中身を食べたっけ。

　あの後、口の中のニンニクの匂いには閉口した記憶がある。

　おかずを分けあい大勢で食べる、懐かしき昭和の食卓風景が匂いと共に不意によみがえってくる。

　今の私は子どもも家を出て夫婦ふたり。

　子ども達が一緒だった頃が懐かしい。

　でも、朝起きして子ども達にお弁当を作っていたあの頃に戻るのも何だかなぁ。

（T)

—————————–

★今宿タイムズ第407号平成28年(2016年)8月1日