「筑前今宿歴史かるた」から今宿の歴史を学ぶ 16

■「筑前今宿歴史かるた」から今宿の歴史を学ぶ 16

　今回は『今宿遺跡めぐり』として今宿の遺跡案内をしたいと思います。秋風が吹く気持ちよい季節です。

　ご興味のある方はこの散策コースを巡ってはいかがでしょうか。

宿場町コース

(1)東松原の飢人地蔵堂→(2)二宮神社→(3)乳母地蔵→(4)櫻井往還道標→(5)門際(横町)馬つなぎ石→(6)徳正寺（飢人地蔵）→(7)上町天満宮(鬼すべ)と観音堂

　唐津街道沿いを歩くと享保の飢饉の時に、今宿の地で行き倒れになった人達を供養するために建てられた東松原地蔵堂があります。

　地蔵堂にお参りした後に、街道を歩き二宮神社へ。二宮神社は谷村から分村してきた村人が建立した神社で、境内では書や絵画に秀でたことで知られる江戸時代活躍した女性、亀井ショウキンの説明板を見ることができます。

　ここから更に西に向かいます。この旧唐津街道は江戸時代とさほど変わらぬ道幅に昔の佇まいを残す家もあり、当時の風情を感じながら静かな住宅地の中に残る乳母地蔵に立ち寄った後、玄洋公民館横の櫻井往還道標へ。

　これは唐津街道と櫻井神社への道の分岐点として江戸時代の建立され、その位置はほとんど変わっていません。

　道標に従って、その角を左折して道を渡って、横町もんぎわビル脇にある馬つなぎ石（今山の柱状節理の玄武岩）を見ながら、更に街道をを進み徳正寺、そして上町天満宮を目指します。

　上町天満宮の境内には享保の飢饉後に東松原地蔵堂と共に作られた観音堂。えのき（榎）の保存樹、珍しい六角形の庚申塔などを見ることができます。

元寇防塁・今山・海岸コース

「筑前今宿歴史かるた」から今宿の歴史を学ぶ 16

(ア)元寇防塁(長垂海浜公園)史跡→(イ)伊藤野枝生誕の地→(ウ)横浜浦(横浜米蔵跡)→(エ)横浜庚申塔→(オ)馬つなぎ石→(カ)今山（弥生時代石斧製造所跡）→(キ)熊野神社

　長垂海浜公園の松林の中に元寇の際に元軍の上陸を防ぐために造られた石築地(防塁)が埋もれていることをご存じでしょうか。

　元寇と元寇防塁を示す立札が立てられている場所近くの地面をよく探してみると松林の中に点々と地面から石が露出しているのがわかります。

　これが防塁の石です、当時は海側に向かって2メートル半の高さに造られた防塁が740年以上の年月の間に砂に埋もれ、今は上の石が見えるだけになっています。

　立札から西に向かって松林の中を散策した後、海沿いの道を更に進み、玄洋公民館へ。

　関東大震災の混乱のさなかに夫の無政府主義者の大杉栄と共に憲兵に惨殺された女性解放運動の伊藤野枝の生まれた場所が、今はもう何も残っていませんが、この公民館前の清水畳店辺りです。

　平塚らいてうが創刊した「青踏」の最後の編集長でもあった伊藤野枝が今宿の出身であることは案外知られていません。

　ここから、横浜浦と呼ばれる黒田藩時代～明治時代に米蔵があったところへ向かいます。場所は井上耳鼻科の前の道路を海側に渡った道を旧道に抜ける道付近で、現在はその跡は何も残っていませんが、この横浜浦の船着き場に貢米、生活物資などを積んだ木造帆前船が行き来し、当時は海運の拠点でした。

　そこから、横浜旧道を更に歩くと旧怡土郡と旧志摩郡の境界を示すために置かれたとされる庚申塔が当時のままに（道路の真ん中に）置かれています。

　庚申塔は悪霊などを防ぐ意味で道の辻や集落の出入り口によく置かれていました。更にこの近くの民家・板屋家には昔、馬を繋いだ石の柱、馬つなぎ石が置いてあります。

　ここから、今山へ向かいます。信号を渡り、山へ登る階段を登ると熊野神社、今山遺跡の立札があります。

　今山は石斧（石器）の材料に適した柱状節理の玄武岩の産地で、そのため弥生時代(2400年前)、太型蛤刃石斧（ふとがたはまぐりばせきふ）の製造所であったと考えられています。

　この石斧は糸島平野を始め、福岡平野、佐賀平野、筑後平野、熊本平野等からも発見され、随分遠くまで流通していたことが判明しています。

　しばらく弥生時代に思いを馳せた後、最後は休息を兼ねて、熊野神社でお参りはいかがでしょうか。

＊来月は今宿校区を巡るコースを予定しています。お楽しみに。

（田中）

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■平成27年(2015年)10月1日第397号