シノちゃんVOICE Voice.4 海面ハウス 尾形 潤

シノちゃんVOICE Voice.4 海面ハウス 尾形 潤

海面ハウス オーナー 尾形 潤
海面ハウス オーナー 尾形 潤

インドア生活者ができる唯一のアウトドアスポーツ、それが「シーカヤック」。根性もチームプレイも要りませんが、すべて自己責任です。

今津にあるシーカヤッククラブ「海面クラブ」のクラブハウス

海面ハウス

オーナー 尾形 潤

 シーカヤックという海上のスポーツを行なっているクラブが糸島半島の今津にあります。北アメリカの先住民イヌイットが海上で魚やクジラやアザラシの猟をするのに使ったカヌーがシーカヤックの原型だそうです。一人乗りか二人乗りでパドルという櫓を両手で左右に漕いで進みます。このシーカヤックの魅力を教えていただこうと、海面ハウスのオーナー尾形潤さんにお話を伺ってきました。

尾形さんのシーカヤック初体験。

 尾形さんは以前サラリーマンをされていて40歳のとき、シーカヤックに出会ったそうです。シーカヤック経験者の友人に誘われ、生の松原にあったシーカヤックショップで、シーカヤックに初めて乗ったそうです。友人が、「シーカヤックなんて誰でも乗れるし簡単だよ。俺なんか初めて乗って能古島を軽く一周してきたんだから。」と言うので、海岸で、簡単なレクチャー受けてすぐに、その友人の後ろから、能古島一周のコースにチャレンジしてしまったそうです。

 
 友人に負けたくないという気も働いて、めいっぱい力を入れて漕いでしまったそうです。やっと能古島を半周し、帰路に向かったのですが、体力が段々無くなってくるし、息が上がり腕に力が入らないし、正面に見えている生の松原がちっとも近づいてこなかったそうです。海の上では自分が漕がないことにはどうしようもなく、誰も助けてはくれません。軽く考えてシーカヤックに乗ったことを後悔し、へとへとに疲れきって、やっとのことで、岸にたどり着いたそうです。自分の中では悔しいやら情けないやらで二度とシーカヤックになんかに乗るもんかと思ったそうです。

 そして、翌日になり二日経ち三日経ちすると、全身が筋肉痛の中、あの体験は何だったのだろうと思い返すと、能古島一周をやり遂げた達成感や、必死で全てを忘れてパドルを漕ぐことに集中していた充実感がこみあげてくるし、情けない状態で見えていた風景までがスローな映画の美しい風景のように思い出されてきて、パドラーズハイとでもいうのか、全てが素晴しい体験だったように思い出されたそうです。

 それから、2週間後には2回目のシーカヤック体験をして、少しずつ技術を覚え、海に出る回数を重ねるごとに、楽にパドルを漕げるようになり、シーカヤックの魅力にはまりこんでいったそうです。
 
 尾形さんがおっしゃるには自分は頑張ることとか根性とか、チームプレイとかが苦手で、しかも、インドア派で、アウトドアのスポーツが苦手だったそうです。しかし、シーカヤックはそんな自分にも合っているし、自然が相手で奥が深?いスポーツなんだそうです。

自分でクラブを開業

 尾形さんが50歳になり、シーカヤック歴も10年になろうとする頃、リーマンショックのあおりを受けて、シーカヤック関係のクラブやショップがどんどん潰れていったそうです。尾形さんの属するお店も無くなり、新しいお店を捜していたそうです。
 
 その頃、自分がお店を運営するならああするのにとか、こうするだろうとか、いろいろ思うことがあったそうです。そうしているうちに、自分でシーカヤックのクラブをやってみたいという想いがふつふつと湧きあがってきたそうです。家族と相談の上、クラブのお店を開業するための場所探しを始めたそうです。自分にとっては一番愛着のある能古島の周辺の場所をあちこち訪ね、2年ほど探し続け、地主さんと交渉して、現在の今津の場所を貸していただけるようになったそうです。

 尾形さんは務めていた会社を早期退職し、自分でクラブハウスを手作りで建てられたそうです。隣接するカヤックの倉庫は後に海面クラブのメンバーになる知り合いのアイデアで、コンテナを2台並べ、別の知り合いに溶接等の技術を貸していただいて屋根を取り付
けたそうです。このように、開業に至るまで、そして、開業後もメンバーの人たちの力や知恵を借りてこれまでになったのだと感謝されていました。

海面クラブの転機、朝鮮海峡を渡る

 シーカヤックのクラブの運営をしていると、いろいろなメンバーさんが増えて、スピードを競うレースに出たいとか、奄美大島で漕いでみたいとか、いろいろなニーズが増えてきたそうです。そんなニーズのひとつに朝鮮海峡を越えて韓国にシーカヤックで渡りたいというのがあがってきたそうです。まさに海面ハウスは九州の北西部に位置し、邪馬台国の卑弥呼の使者が渡ったコース上にあり、朝鮮海峡を渡ることにメンバーさんたちが大いにロマンを感じ、この企画が動き出したそうです。

 どういう船で渡れるか、どういうコースにするか、渡航メンバーを誰にするか、渡航許可をもらえるのとか色々な具体的問題があがってきたそうです。それらのことをひとつひとつ、何度も何度もメンバーさん同士が話し合って問題をクリアしていったそうです。

 そしてついに企画がスタートして4年後の2006年に、タンデム(二人乗り)のシーカヤック12隻、このクラブだけでなく全国から集まった24人が博多から韓国釜山まで渡る旅をスタートしたそうです。初心者からベテランまで参加して、初心者にとってはハードな旅となりましたが、ついに釜山までの渡航に成功したそうです。

 「大きな事を成し遂げようという気持ちから出た冒険ではなく、あくまで面白いことをしようという、メンバーの積極的遊び心の延長線上の出来事だったと思います。

 海を渡るメンバー以外にもそれをサポートするメンバーもいっしょになって、一つの夢を達成しようとしました。そのときのメンバーの献身的な姿を見て、ああこのクラブを作って本当によかった。」と尾形さんは実感されたそうです。

尾形さんの誇り

 現在約70人のメンバーがいらっしゃるそうです。カヤックの国体の選手から、70代の高齢の女性、おじいちゃんとお孫さん、ご夫婦で来られている方と、メンバーの構成も様々ですが、一般のお父さんや福岡に単身赴任で来られているお父さんが意外と多いそうです。シーカヤックに乗るばかりでなく、ただおしゃべりを楽しむためだけに海面ハウスに来られている方も多いそうです。

 海を見ながら風に吹かれてニコニコ笑顔の尾形さんを中心にいろいろしゃべって、リラックスしていると、時間がどんどん過ぎていきます。カヤックの出し入れもメンバーさん同士があうんの呼吸で協力しあっています。尾形さんはそういう紳士的なメンバーさんたちのいるクラブのオーナーであることが自分の誇りだとおっしゃっていました。

もっと自然を楽しんで

 尾形さんから「最近日本人は自然を求めなくなっていると思います。この自然豊かな福岡にいて自然の良さを味合わないのはもったいないです。動けば変えらえます。もっと自然を楽しみましょう。」と皆さんに伝えてほしいと言われました。

 福岡の都心から車で30分、今津の赤十字病院の北側のクラブハウス「海面ハウス」があります。そこからは左手に糸島半島、玄界灘、正面に博多湾に浮かぶ能古島、遠くに百地の近代ビル群、右手には姪浜から生きの松原、長垂の岬から今宿、今津の海岸が一望できます。シーカヤックで海上に出れば、海面からの視線でまた違った海からの絶景が展開します。他所から来るパドラーに夏だけでなく冬もこんな絶景を楽しめるポイントを持つシーカャッククラブは国内にはなかなか無いと言われるそうです。一度海面ハウスに来てみてください。

■海面ハウス

所在地:福岡市西区今津 535-1
TEL : 092-807-4777
火曜日定休
4500円の体験コースがあります。(要予約)
HP : kaimen.life.coocan.jp

編集後記

 今回は海面ハウスの尾形さんを取材させていただきました。伺ってみると、リラックスした自然体の大人たちが、にこにこしながら、シーカヤックという道具で、自分のペースで遊んでいらっしゃいました。その中心でニコニコしながら自然体で、クラブのメンバー皆さんが安全に快適になるようお世話していらっしゃったのが尾形さんでした。本当に居心地が良いハウスで、6回訪問してシーカヤック体験もしてしまいました。味わったことのない新しい感覚でした。海上は気持ち良いです。

(取材・撮影・編集・デザイン嶋崎)

グラフィックデザイナー:嶋崎達哉ブログ「しまちゃんの愛し糸島ブログ」

シノちゃんVOICEについて

 第4号ができました。今回ご紹介するのはシーカヤックのクラブ「海面クラブ」の代表の尾形潤さんです。海面クラブの活動基地「海面ハウス」は九州でも有数のロケーションにあり、四季を通じてシーカヤックが楽しめるとのこと。シーカヤックが好きになって、クラブを作ったいきさつや、その魅力を伺いました。

2014年6月27日号
発行/篠原清隆
読売センター
今宿・周船寺・姪浜・志摩・前原・吉野ヶ里
編集人/嶋崎達哉
福岡市西区今宿駅前1-5-5
TEL 092-806-0461
FAX 092-806-0463

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